建設費ベースで比較する【原子力発電所】と【ガス火力発電所】

 

原子力発電所の建設費用

原子力発電については、使用済み燃料を再利用可能の原料や資産と捉えるのか?廃炉費用も含むのか?など、考慮する点も多々あると思います。

ですが、ここでは発電規模がほぼ同等の場合、建設費用を基に、単純に原子力発電所とガス火力発電所の差を比較してみたいと思います。

まず、例として東京電力の原発の建設費用をみてみたいと思います。

■東京電力 福島第二原子力発電所
○1号機 356,500,000,000円(3,565億円)
○2号機 276,300,000,000円(2,763億円)
○3号機 314,800,000,000円(3,148億円)
○4号機 291,400,000,000円(2,914億円)

■東京電力 柏崎刈羽原子力発電所
○1号機 475,600,000,000円(4,756億円)
○2号機 299,800,000,000円(2,998億円)
○3号機 325,300,000,000円(3,253億円)
○4号機 334,400,000,000円(3,344億円)
○5号機 356,200,000,000円(3,562億円)
○6号機 418,200,000,000円(4,182億円)
○7号機 366,600,000,000円(3,666億円)
(引用:マイナビニュース マネー 『電力会社に、「原子力発電所の建設費はいくらですか?」と聞いてみた』より)

と、なっています。
また、このリンク先では

東京電力さんからは「建設時期がそれぞれ違いますので、当時の物価なども考慮して建設費をご覧ください」というお話を頂きました。

とも書かれていますので、後ほどその点も考慮してみたいと思います。

次に、東京電力の電力供給設備からそれぞれの出力等を見てみますと

発電所名 ユニットNo. 出力(kW) 運転開始年月
福島第二 1号機 1,100,000 1982/4/1
2号機 1,100,000 1984/2/1
3号機 1,100,000 1985/6/1
4号機 1,100,000 1987/8/1
柏崎刈羽 1号機 1,100,000 1985/9/1
2号機 1,100,000 1990/9/1
3号機 1,100,000 1993/8/1
4号機 1,100,000 1994/8/1
5号機 1,100,000 1990/4/1
6号機 1,356,000 1996/11/1
7号機 1,356,000 1997/7/1

なるべく、新しい方が参考になるかと思いますので、柏崎刈羽原発7号機を基に見てみますと

出力 建設費用
135万6000kW 約3,666億円

となっています。

これを比較しやすいように100万kW当たりに直しますと

出力 建設費用
100万kW 約2,704億円

となります。

これを、上記にあったように当時の物価指数を考慮し
参照⇒日本銀行 昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?

年度 国内企業物価指数接続指数
<平成22年平均 = 100>
1997年 102.5
2012年 100.6
2013年 101.9

柏崎刈羽原発7号機が建設された1997年を102.5とし、100になるように計算し直しますと、約2,638億円になります。

ガス火力発電所の建設費用

一方、ガス火力発電所の資料としまして、東京都環境局のサイトから、東京天然ガス発電所プロジェクト資料 『天然ガス発電所設置技術検討調査結果について「第5章発電所の建設費」(2012年)』を参照しますと、100万kW出力の天然ガス発電所の建設費用は

出力 建設費用
100万kW 約1,000億円

の試算となっております。

こちらも先ほどの物価指数にあてはめますと、建設時期は2012年ですので100.6という指数になっています。これを100に直しますと約994億円となります。

また、こちら 出力7万kW級のガス火力発電所、新電力が新潟県に新設 の記事では、新電力の「日本テクノ」は、7万kW級のガスエンジン発電所「日本テクノ上越グリーンパワー(仮称)」に100億円弱の投資を2013年におこなっており、こちらも同様に100万kWで指数100になるように計算しますと

出力 建設費用
100万kW 約1,428億円→1,401億円
(2013年を101.9とし、100に計算後)

と、なります。

まとめ

発電所 出力 建設費用
柏崎刈羽原発7号機 100万kW 約2,704億円
東京天然ガス発電所プロジェクト 100万kW 約1,000億円
日本テクノ上越グリーンパワー 100万kW 約1,401億円

この様に建設費用による単純計算ですが、原子力発電所の建設費はガス火力と比較して、かなりコスト高だといえます。

しかし、関西電力よくあるご質問を参照しますと…

発電コストは、石油を使った火力発電と、太陽光発電が1kWhあたり30円以上と高い傾向にあります。
天然ガスを使った火力発電は10.7円程度、石炭を使った火力発電は9.5円程度です。
原子力の発電コストは、8.9円程度と他の発電方法と比較しても遜色ない水準です。

となっています。

このコスト計算は、使用済み核燃料を100%再利用できる事を想定、また、高レベルの放射性廃棄物の処理に至っては最終処分場の目処すらたっておらず計算自体が不可能なはずです。

また、「総括原価方式」による電気料金の設定上、設備の価値が高い原子力発電所を保有することが、どれほど電気事業者にとって有利なことかも知られており、本当に原子力が必要なのか、このやすいコストで発電出来ているのか疑問に思えます。

(画像引用:東京電力 「発電所の概要」より)